初代理事長のメッセージ

ボランティア労力ネットワークについて

森脇 宜子


 1973年9月にボランティア労力銀行は大阪の地で発足しました。長年生活評論家として活躍された故水島照子先生が創立者で、既に40年の実績があります。現在の会員数は約500名で、支部数は100余。全国組織で北海道から九州まで会員がおります。

 1時間の労力を1点として単位を決め、その労力を互いに点数として貸し借りするシステムです。これにより、介護・育児・出産などの過労から逃れ、病気・事故などの不時の出来事への対処や老いによる不如意を補い、協力し助け合って明るい生活を送ることが出来ます。

 お金の経済は著しく貧富の差を生み、社会に数々の歪みをもたらしました。金融破綻もその一例ですし、今のような低金利ではどれだけのお金を貯めれば老後の安心を得られるか見当もつきません。お金に代えて労力時間の貸し借りなら、これ程の歪みや格差はありませんし、人々が等しく持っている時間は、その人がどのように使うかによって値うちが決まります。その人の一生の一コマである時間は、これを積み重ねてその人の寿命となります。私達はあと何年生きられるか誰にもわかりませんし、世界の人々の寿命を較べてみても、長寿国とそうでない国とでもせいぜい2倍足らずの差しかありません。この違いの少ない時間を単位として、「貴方の寿命の一コマを貸して下さい」「私の命の一コマで貴方のお世話をしましょう」という接し方をすれば、互いに卑屈になったり驕ったりすることなく謙虚で正常な助け合いが出来ると思います。

 この時間の労力(点数)を私達は『愛の通貨』とよんで基本にしております。『労力にインフレはない。労力を新しい愛の通貨にしましょう。労力銀行の利息は友情です』は私達のキャッチ・フレーズです。

 ボランティア労力銀行には3本の大きな柱があります。1本は前述の時間を単位とした助け合い、1本はボランティア活動、もう1本は会員以外の方への外部支援。月に2時間程度以上のボランティアをすることは、会員資格ともなっていて、会員一人一人が毎月かわることなく続けております(病気やそのほかの理由があるときは免除)。
 
 人は他の人の助け無しに生きることは不可能ですし、また人のために尽くすことによってその人の人生も深められると思います。月に2時間のボランティアをすることは、人と人との交流の輪をひろげ、思いやりの心を育み、同時に自分自身の心を正常に保つのにも役立ちます。私達の組織では、老人ホーム・児童施設・障害者施設・在宅の高齢者や障害者の方に対するお手伝いのほか、コミュニティーの中での活動などさまざまの場所において自分の力にあったボランティアをして社会貢献をしています。

 人間の一生を考えますと、比較的に時間にゆとりのある時期と足りない時期があります。また力がみなぎっていて苦もなく人のお世話のできる時期と、体力が衰えて人の手を借りなければ何もできない時期があります。それらを互いに組み合わせば、無理のないより良い人生が送れると思います。例えば子育てが終わり趣味や稽古事では生き甲斐を感じられない人が、介護や仕事で疲れ果てている人に力を貸して喜ばれながら点数を受け取り、老後にこれを使えるように貯めておく事ができます。定年退職した人にも同じ事がいえます。まだ体力がある間にしっかり人のお世話をして点数を貯めておき、やがて体が不自由になった時にその点数を引き出して使うことが出来るなら、その人は他の人のお世話になりながら実は自立しているのと同じ事になっていると思います。

 ボランティア労力銀行の点数は介護やお手伝いにだけ使われるのではありません。会員同士が自分の技術や得意の分野を活かして、教えたり頼まれたりなど便宜の提供や交換にも使っているのです。植木の手入れ・日曜大工・和洋裁・茶華道・カウンセリング・宿泊受け入れなど何でも出来る事なら応じ合っています。役員会でこうした労力や便宜に対する点数を決めています。血液の依頼には難しい問題もあるので点数で扱う事は出来ませんが、善意の助け合いとして今までに何度か行われました。

 ボランティア労力銀行は全国組織の強みを生かし、遠隔地間の助け合いもしています。郷里の老親や単身赴任の夫や遊学中の子供など離れて住む家族に何か起こった時、すぐその地の会員が駆けつけて手をさしのべて助けて貰えるならこんな心強い事はありません。

 ますます個人化と高齢化が進む世の中にあって、私達はボランティア労力銀行の趣旨を大切にし、手足に心を通わせ血縁に関係なく互いに助け合う活動を充実させて行きたいと思っています。これは世代間隣人間の絆を強め友愛と信頼に基づく人間関係の豊かな社会を作り上げる事になると考えています。